刑事弁護の都庁前法律事務所TOP > 刑事裁判 「知るべき基礎知識」
刑事裁判は一般の方にとってなじみのないものでしょう。ある日突然、刑事事件に巻き込まれ刑事裁判にかけられた場合に、刑事裁判についての知識が全くないと不安は募る一方です。
そこで、以下に刑事裁判で知っておくべき基礎知識について説明しましょう。
刑事裁判の開始は起訴
刑事裁判は、検察官が裁判所に対して被告人を処罰するように求めることによって始まります。これを起訴というのですが、起訴は検察官だけができることです。弁護士が起訴ができるかのように誤解している方がいるようですが、弁護士が裁判にかけることができるのは民事裁判だけで、刑事裁判は弁護士がイニシアチブをとって始められるわけではありません。
検察官は裁判所に起訴状を提出します。起訴状には、被告人を特定できる事項と、公訴事実、罪名を記載します。起訴状の中身には刑事裁判において予断を抱かせるものは添付してはいけません。これが起訴状一本主義です。起訴状一本主義は裁判所があらかじめ被疑者に対して何らかの予断を抱くことを排除するためのもので、刑事裁判の公正が目的です。
起訴されると、裁判所は遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達。検察官・弁護士は事前に、お互いに対して刑事裁判に提出する予定の証拠を見せ合います。検察官・弁護士が証拠提出を予定しているものについて裁判所は、刑事裁判で証拠として採用してよいかどうかの意見を求めるので、刑事裁判の前に検察官・弁護士の方でお互いに相手に見せて内容を確認するのです。
刑事裁判の流れ
刑事裁判では最初に、冒頭手続が行われます。裁判長はまず出頭した被告人が人違いでないかどうかを確認。これを人定質問といいます。被告人に氏名や年齢、職業、住居、本籍を確認し、起訴状に記載された被告人と同一人物かどうかを確認。次に検察官が起訴状を朗読します。そして何を検察官が刑事裁判の審理の対象としているのかを明らかにします。被告人にとっては何罪のどの範囲で防御をすればよいのかを明らかにしてもらい、これから始まる刑事裁判において反論の機会を与えられるという意味で重要なものです。裁判長は被告人に対し黙秘権の説明をします。ずっとだまっていることも1つ1つの質問に対して答えないこともいずれもできるのですが、質問に答えた場合には刑事裁判において被告人にとって有利にも不利にもなることについて説明がなされます。このような黙秘権についての説明をした後に、裁判長は被告人及び弁護士に対し、刑事裁判の公訴事実に間違いがないかどうかを確認します。
刑事裁判の冒頭陳述に続いて行われる証拠調べではまず、検察官が冒頭陳述を、検察官は証拠を用いて証明する事件を説明。刑事裁判の証拠調べは、証人に証言をしてもらい、証拠としての書類や物を調査。順番としては最初に検察官の提出する証拠を、次に弁護士の提出する証拠を調査、弁護士の証拠の調査が済んだあと、証拠調べの最後には被告人質問があり、被告人に一問一答の形で事実関係や情状など、弁護士と検察官がそれぞれ質問。刑事裁判の証人尋問では、まず証人尋問を要求した側(検察官か弁護士)が尋問。これを主尋問といいます。検察官か弁護士が行う主尋問では、証人の記憶がはっきりしない場合などを除いて誘導尋問を禁止。主尋問の後に、その証人尋問を要求しなかった側(検察官か弁護士)から反対尋問が行われます。反対尋問では誘導尋問が許されます。続いて検察官は、論告を行います。ここでは被告人の犯罪行為に対する法的評価を述べます。同時に、どの程度の刑罰が被告人にはふさわしいかの意見も述べます(求刑意見)。検察官の論告に続いて弁護士も弁論を述べます。弁論の次に、被告人には最終陳述の機会が与えられ、何か言いたいことがあれば最後に表明する機会が与えられます。
ここで証拠調べ手続は終了して刑事裁判は結審となり、判決の宣告となります。
刑事裁判第1回公判期日の流れ
- 被告人の氏名、本籍、住所、年齢、職業をきく人定質問

- 検察官が起訴状を朗読

- 裁判官が被告人に黙秘権の告知、起訴状の公訴事実に対する被告人の意見(罪状認否)(「その通り間違いありません」、「事実と異なります」と指摘)、弁護士の意見

- 検察官が冒頭陳述と証拠請求
冒頭陳述は、立証予定の事実で、通常は、被告人の身上・経歴、本件犯行に至る経緯、犯行の状況等、情状を述べる
弁護士が同意・不同意の意見
弁護士が同意した証拠は検察官が要旨を述べる
不同意の場合、検察官が証人尋問の請求の可能性

- 弁護士の立証
自白事件では弁護士が量刑上有利な証拠を請求
同意した証拠は弁護士が要旨を述べる
弁護士は家族などの情状証人の尋問と被告人質問を請求
否認事件では争点に関する証人請求などを弁護士が述べる

- 検察官の論告・求刑
検察官の主張、量刑意見

- 弁護士の弁論
弁護士の主張、弁護士の意見

- 被告人の意見陳述

- 弁論終結(結審)
自白事件では第1回公判期日でここまで

- 判決宣告
刑事裁判における証明
刑事裁判はあくまでも起訴状に書かれた事件について、被告人が有罪かどうかを判断し、有罪であればどのような刑罰を科すかを決めるものです。刑事裁判では、検察官が主張する犯罪事実の存否に関する事実認定が非常に重要です。刑事裁判における事実認定は過去に発生したと検察官が主張する事実が本当にあったかどうかを判断するものです。裁判官は、公訴事実の存否を直接見聞きしているわけではないので、証拠や、証人や被告人の話によって判断。裁判官が判断の材料にできる証拠には制限があり、「疑わしきは被告人の利益に」の原則が存在します。証拠による立証は「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」でなければなりません。
刑事裁判での挙証責任
刑事裁判において証明の必要がある事実があったかなかったかいずれとも判断できなかった場合は、事実は証明されなかったことになります。刑事裁判では、犯罪事実については検察官に挙証責任があります。刑罰を科すと主張する国家が犯罪事実を立証する責任があり、被告人の方に積極的に無罪を立証すべき責任を負うわけではないのです。刑事裁判では「疑わしきは被告人の利益に」で、無罪の推定が働いているのです。
刑事裁判における証拠
刑事裁判の証拠には甲第○号証、乙第○号証、弁第○号証などと番号が付けられます。検察官が刑事裁判において提出する証拠には、被害者の供述調書や犯行現場の実況見分調書、鑑定書などの甲号証と、被告人の供述調書や前科調書等の乙号証に分けて番号が付けられます。刑事裁判においては被告人の供述調書や前科調書等以外の証拠である甲号証から先に取り調べることに。弁護士が刑事裁判において提出する証拠には弁第1号証、弁第2号証と番号が付けられます。
刑事裁判における供述録取書
刑事裁判では供述録取書が非常に重要です。検察官が被害者や目撃者などから事情聴取した供述を記録した書面(検察官面前調書)を略して検面調書といいます。調書作成の際には、供述者自身に調書の内容を確認してもらい、内容に間違いがないとき検面調書に署名・押印。警察官が事情聴取した供述を記録した書面(司法警察員面前調書)を略して員面調書といいます。警察の捜査は、捜査の初期段階で事件の全貌が明らかになっていない段階から始まるので、員面調書では事件関係者の供述が総花的に記録されます。これに対し検察官は、警察から送られた資料を検討して核心部分に絞って捜査するので、検面調書は要点をついた内容になります。被疑者以外の人の供述内容を記録した検面調書は、員面調書よりも、刑事裁判の証拠として利用価値が高いともいわれます。
刑事裁判における自白の取り扱い
刑事裁判において自白とは、自分の犯罪事実を認める被告人自身の供述です。不利益なことに関する供述は信用できると考えられるので自白は「証拠の女王」と呼ばれ、かつて強制・拷問などによって自白を得ることが行われたことがありました。そこで刑事裁判においては任意性に疑いのある自白は排除するという原則が定められています。任意性のない自白は、証拠能力が認められません。
刑事裁判での被害者
刑事裁判ではたとえば性犯罪の被害者について、被害者の住所・氏名などを裁判で明らかにしないとか、証言の際に被告人や傍聴人から姿が見えないように遮へいをするなどの配慮がなされることがあります。
被害者は刑事裁判の第1回公判期日後には、正当な理由がないなどの例外的な場合を除いて、刑事事件の記録刑事裁判の調書を閲覧したりコピーが可能です。被害者が刑事裁判の傍聴を希望すれば、裁判所が配慮をすることになっており、通常は刑事裁判の傍聴が可能。希望すれば刑事裁判において被害に関する心情などについて意見を述べることもできます。
故意の犯罪行為によって人を死傷させた犯罪や性犯罪などの一定の犯罪の被害者には、裁判所の許可を得て、刑事裁判に被害者の参加が可能です。刑事裁判に出席して検察官の隣に座って情状証人や被告人に質問をし、意見を述べます。弁護士に委任することもでき、一定の場合には国選被害者参加弁護士の選任も請求可能です。刑事裁判で有罪判決が出た場合には損害賠償命令を申し立てることもできます。刑事裁判が終わった後は、検察庁から裁判の結果や出所予定、釈放の通知も受けることに。
刑事裁判における判決の言い渡し
刑事裁判では、被告人を在廷させて判決を言い渡します。刑事裁判の判決は通常、まず主文から。有罪の場合、懲役刑なら「被告人を懲役○年に処する。未決勾留日数中○日を右刑に算入する」という主文になります。懲役刑では通常、未決勾留日数(判決までに身柄拘束されていた期間)から刑事裁判に最低限必要な日数を引いた日数を、刑期から差し引きます。執行猶予の場合にはこの後に、「この判決が確定した目から○年間右刑の執行を猶予する」とくだりが続くのです。
無罪判決の場合は、主文は「被告人は無罪」となります。
裁判官が「主文は後回しにして、理由から述べます」と言って判決が主文からでなく理由から始まる場合は、死刑判決の時などです。死刑判決の時に結論をいきなり言い渡されると、被告人がまともに判決理由を聞く心理状態にならないことから、裁判官が被告人に判決理由をよく聞かせたいという趣旨です。
刑事裁判における判決が出てからの流れ
無罪判決の場合、刑事裁判の判決後にすぐに身柄拘束は効力を失い釈放され、身柄拘束に対する刑事補償を請求可能。
罰金刑の場合、検察庁で罰金を納付。
執行猶予の場合、身柄拘束中でも当然、釈放。
実刑判決の場合、保釈中でも保釈は取り消され、身柄が拘束され、実刑判決が確定すると、刑務所に行くことに。控訴して再保釈の請求が可能ですが、一般的には保釈はされにくくなります。保釈金も追加して積むのが通常です。
死刑判決の場合、確定後は拘置所で執行を待つことになります。











